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2010年5月7日。

Johan Simons
& Paul Koek 演出の「Kasimir und Karoline カシミールとカロリーン」(von Schauspiel Koeln シャウシュピール・ケルン)の初日とともに、Theatertreffenは幕を開けた。

舞台はオクトーバーフェスト会場の裏手。
(舞台の様子は Berliner Festspielのサイトから 動画で見ることが出来ます)

舞台美術は工事現場で見かける足場トラスで3階建てに組まれたもの。そのパッとしない薄汚れたトラスとは対照的な、まぶしいほどの蛍光灯と、”ENJOY”とある ラメのようにキラキラした文字が印象的。
とてもBert Neumannらしい美術である。


真っ白なモヒカンかつらを付けた、これまた全身ラメ入り黒タイツに身を包んだミュージシャンがもう最高。
2時間のテキスト演劇に休憩なしの演奏は、演技とからんでいい感じ。
音楽監督のLoy Wesselburgはいい仕事をしているなぁ、と感心。

演出的にはwarabi個人的に期待が大きかったので、よくも悪くもなくという内容にがっかり。
共同演出だったからなのか、NTG (Johan Simons拠点のゲント劇場)との違いからなのか、それはわからない。

美術もNeumannにケチをつける訳ではないけれど、オクトーバーフェストの表が盛り上がっているようには見えなかったのが残念。

"ENJOY”という文字はきっと裏側になっているべきで、照明も舞台美術としてまぶしいほどの蛍光灯を使用するだけでなく、もっと表が盛り上がっている様子が出ているとよかったのではと思うのだ。

悪くはないんだけれど、
「なにかが少しずつ足らない」

warabi的には、そんな感想を持った舞台であったが、
初日パーティー& TTオープニング・パーティーに招かれた客たちは大きな拍手を送っていた。
warabiたちも、無事に初日が開けたことでホッと胸を撫で下ろす。



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フォワイエ1階の様子
提灯は 今年のカラーの オレンジ


フォワイエに出てみると、着飾った観客たちが飲み物を片手にあの木の小屋に座っているではないの!

「 フォワイエに人がたまるように 」
と美術家が提案したこのプランは大当たり ♪

デザイナーもMくんも、そして技術課長もそれを遠目にし、満足そうな笑みを浮かべていたのであった。。。







今年のTTに招聘された社会派演劇 "Marat"の演出家Volker Loesch フォルカー・ロッシュ。
彼の新作 "Berlin Alexanderplatz" ( ← youtube映像)Schaubuehneに観に行く。

舞台後方から入ってくると、まず舞台いっぱいに敷き詰められた小銭に圧倒される。
客席は前方に見えるが、ある一線から並んでいるのではなく舞台上にも2席、3席、または半列くらい不規則に並んでいる。もちろん、小銭の中だ。

スタッフはMaratの時と同じクルー、客入れからなんだかワクワクさせてくれる。

Alfred Doeblinのこの作品は、原作ではベルリンなまりのひどい原語で書かれている。
ストーリーを簡単に紹介すると、
主人公はFranz Biberkopf フランツ・ビーバーコプフ という刑務所から出てきた男性。彼がこれを機に新たな人生を送ろうと努力するが、結局世の中は簡単にそうさせてくれないという悲劇である。

演出家のLoeschはこれは今の社会にも通ずるものがあると、20人以上の現役もしくは囚人(Chor)と4人の俳優という素材を使って、現在に置き換えたのだ。

オリジナルのテキストと出演者の体験、そしてLoeschの演出を交えてのこの作品。
Chorがただのコーラスではなく、Maratのときと同様に芝居ではない経験者としての本物の迫力を持ち、またChorに負けない演技をするFranz役 Sebastian Nakajewを後押しする。

Loeschらしいのは、ただ現状を見せつけるのではなく、その中におかしさを見出している点。

たとえば、
舞台いっぱいの小銭の上に立っているのは、仕事をもと止めているものや、「金、金」と言って大枚を稼ぐチャンスも狙っているものの、足下に転がっているチャンスには全く気がついていない。

また、後半に出てくる(youtubeの映像にもある)ドナルドダックの敵のコスプレと大金の入った袋を持って出てくるChorには笑いが・・・


最後の小銭を天に振り投げるシーンは、まるで花火のように一瞬きらめき、果敢なさがあって、とても奇麗であった。

そしてなによりも、
出演しているChorがとても生き生きとしていたのが印象的。
日本でもこういう取り組みはあるのだろうか?
ここドイツでは刑務所の壁も開かれているよう思う。
刑務所内で見た本物の囚人演劇 "Kastper H" から数えると囚人演劇は2度目の鑑賞であることだし。
しかし、これは1度目のそれとは比べ物にならない出来に仕上がっている。
これも演出の力なのか。

後になって考えてみると、warabiのお隣には服役囚が座っていたわけで(そういう演出)、そのせいで観客席にはなんだか高揚感もあったりする。
Mくんは途中握手をされて、とてもうれしそうだった。


いろんな意味で、第4の壁は取り外されている作品なのであった。








川崎公演終了から約1ヶ月後の、12月20日に
山口公演がYCAM(山口情報芸術センター) にて行われる。


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川崎公演の様子 - その1


ベルリンに帰ってきてホッとするのもつかの間、山口分の図面も仕上げないとならない。
やっぱり家はいいね?と、だらだらしてしまう自身を戒めながらひととき集中。
(お茶受けにおせんべいを供にできるのが、なんたって幸せっ♪)


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その2- 不思議な空間
写真で見ると遠近感が狂って見える・・・?


東京公演を見逃した方!
山口には温泉もおいしいお魚や外郎(ういろう)もあります。

是非、ご鑑賞ください。



先日お知らせをした、
mmp「Life On The Planet」@川崎市アートセンター

おととい初日を迎え、本日千秋楽となりました。
劇場入りをすると、撤去までもうあっという間です。

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携帯カメラでの撮影であまり解像度がよくありませんが、
雰囲気はこんな感じに立ち上がりました。

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ご覧の通り、2階建ての美術で、
目にもまぶしい光源がそこかしこに仕込まれています。

テーマは、閉鎖空間に必要な太陽の代わりとなる、「人工光」。
様々なタイプの人工光を使用しています。

本日15時が最終回です。
東京近郊の方々、是非ご来場ください。



なぜwarabiが東京にいるかといえば。。。


mmpの新作、Life On The Planet(川崎市アートセンター)という作品に参加しているため。

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様々な分野で活躍中の方たちと、将来の地球について、私たちの生活そのものがどうなっていくのか、物語にして舞台で上演します。
青森県六ヶ所村にある、「環境科学技術研究所」という施設が存在することから発想をもらい、このまま私たちが突き進んでいくと生活自体がどうなるのか、がテーマになっています。
みなさんがスーパーで手にするレタスやカイワレが、太陽の日に当たることのない植物工場から出荷されていることを知っていますか?
電気が野菜を育てているのです。



毎年勝手に実をつけてくれる田舎のリンゴの木に感謝している、最近のwarabiなのであった。





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