warabi's tagebuch

カテゴリ:アート Kunst > オペラ Oper


ここのところ涼しいなーと思っていたのに、初日近くなって猛暑を思い出したかの様に カンカン照り。
熱された鉄鋼は熱を保ち、開始時刻の20時になっても、もうそれは暑いまま。

すみませーん、お天道様!
ホールの中にいるwarabiたちは温室のトマトみたいに真っ赤になって困っています・・・


ソリストたちはロココ調のドレスのためにコルセットを着用したり、ドレスワイヤーをつけたり、着心地なんか最悪に加えて、この暑さ。大変だよなー。

オケの人たちは、舞台よりも熱された天井に近いところで演奏するので、それも大変そう。


・・・なんて言ってられない!!
warabiたちも全員舞台に登場するために、衣装があるのだ。それも黒のツナギ。長袖、長ズボン、真っ黒、卒倒しそうに暑すぎる・・・



sonne
Foto:Marcus J.Feger


Das Kulturmagazin des Westens
の掲載写真で伺える様に(もちろん、これは稽古の1シーンで本番用ではありません)、太陽が昇って沈むまでを90分でまとめている。

タイムコードがスタートしてすぐ、日の出となるのだが、その ”日の出方" が変わっている。
なにしろ、始まって12秒後に warabi自身が舞台上に出て行くのだから!


このSonne 太陽のシーンは照明デザイナーの Klaus Gruenberg の一番のお気に入りで、「(warabi)は、これで大スターだよ」とか「この登場シーンが一番好きなんだ」とか、よく言っていた。


90分、踊る人は踊って、歌う人は歌って、道具を押したり引いたり、時には全速力で走ったり、物を運んだり。
舞台技術関係27人、舞台アシスタント25人、ソリスト10人、音楽家25人、アーチスト諸々、総勢107人。
上部写真にある様に、100m64フィールドを動き回る体力勝負の90分作品。


具体的にどんな作品なのか、目で確かめたい方は是非会場へ(残り3回公演あり)


speeddating



公演後には、Publikumgesprech アーチストトークならぬ、Speed Datingスピードデーティングが用意されている。


上記の雑誌に、John Cage作品をどんなものにしたいのかを語っていた演出家ハイナー。
しかし、出来上がった作品は演出家ハイナーや特定のアーチストだけが語れるような枠のものではなくなっていたと彼はいう。

そこで、関わった全ての人から話を聞くチャンスが与えられる様にと、
各フィールドに観客たちのためのテーブルとイスを置き、64の関係者たちが6分ごとに(×6回)テーブルを変えて観客の質問に答えたり、自分の立場から作品にまつわる話をするというものとなったのだ。

6分間で自分の経験を知ってもらう」=「スピード・デーティング」からきているネーミング。

warabiたちにとっても直接感想を聞けるチャンスだし、とてもフェアで、観客にとってもなかなかいいアイディアだと思う。


さてさて。

プレミエといえば、Premierenfeier 初日祝いだけれど、初日公演の前にも、いろいろと特別なことがある。

「長い間(今回は特に長くってスタッフも合わせて6週間の稽古)ありがとう」の意味を込めた、アーチストから関係者へのプレゼントが用意されているのだ。


今回は、特に面白かったので、
こちらでいろいろご紹介したいと思う。


toitoitoichoko
ちょっとおしゃれ風


こちらは、
Toi toi toi Chokoladeトイトイトイ・チョコレート

トイトイトイというのは、初日公演の日に ”おめでとう&頑張って" の意味を込めて言う、ドイツの慣習。
どうやって挨拶するのかと言うと、いつもと反対の右側から相手をハグして、耳元で「トイトイトイ」いいながら、または「トゥトゥトゥ」と唾を吐きながら挨拶をするのだ。

なぜ唾を吐くことで、幸先よくなるのかは疑問。ドイツ人は謎だ・・・



そしてこの日は、Heiner Goebbelsのインテンダントとしての初お披露目でもあるし、今年のRTのオープニングでもあった/
これは、そんな意味のこもったチョコレートという訳。




premierekuchen02
白黒はっきり!


こちらは、舞台美術&照明デザイナーKlausからの”64フィールドブラウニー”
Yes No Maybeの決断サイコロ付き。


premierekuchen01
どれだけ大きいか分かるでしょ?


同じアイディアだけれどさらに大きかった、こちらは照明&美術助手からのイチゴクリームマジパンケーキ
どっしりとしたお味。

このふたつは、どのフィールドを誰が食べるのか、という楽しみ付きで盛上がった。

warabiは、24、33、37が欲しかったのだけれど、さすがにそんなに食べきれず、24だけいただいた。
その番号は、6分間100mフォローの最前列の番号だったのよ。こんな感じで、各々思い出のフィールドがある訳なの。



premieremedalien
金メダルは多いほうがいい?


演出部からは、金メダルの授与。

みんな首にかけてもらって、満足そう〜


そして、最後は60の2段ケーキ


60kuchen


なんと、ハイナーの60歳の誕生日だったのだ!!

初日祝いと、誕生日祝い。
ダブルでめでたい!!おめでとうございます


最高の作品をありがとう!!
この作品に参加できたこと、warabiはとても誇りに思います。


あと3回、じっくりと味わいますよ〜



John Cage ジョン・ケージは、20世紀のアメリカ人音楽家、マルチアーチスト。

12音技法を生み出した、オーストリア出身のSchoenberg シェーンベルク に弟子入りした彼。

シェーンベルクも不思議な技法 (不協和音やデフォルメされたメロディーで心地よい音楽とは かけ離れている) を生み出したものだと思ったけれど、ケージのほうがずっとぶっ飛んでいるといっていい。


シェーンベルクは少なくとも音楽であったわけだが、ケージのものは必ずも従来の音楽とくくれるのかは謎である。

例えば、代表作とされる"4分33秒"は、初めから終わりまでの4分33秒第の間、"無音"なのだ。
詳しくいえば、ただ無音なのではない。1楽章休み、第2楽章休み、第3楽章休み、なのだから。

解釈としては、会場のまざまな音を聞くということらしいが、これなら、warabiにも演奏できそう!!

何かの機会があったら、冗談半分で試してみようか。
。いや、4分半じっとしていることのなんと長いことかが分かるだけかも、ね。


ということで . . . .
改めて、


「ジョン・ケージの音楽は "音楽" か?」


答えは、

 「実験的音楽、音の組織化である」


さて。。。

今回の作品、Europeras1&2 ユーロペラ1&2。


ケージは、
「200年間ヨーロッパがオペラを作り出し発信してきた。今度は米人の自分が返信する」
 と、摩訶不思議な独自理論でオペラを作り始めたという。


作品名も、
「 さぁ、これが(自分の作った)あなたたちのオペラですよ」、 "your oper(a)"  = ユァ オペラ "Europera" ユァロペア という、言葉遊びなのですよ。


内容を簡単に紹介すると、

200年間のヨーロッパオペラの中から、200の有名なアリアだけを選りすぐり、舞台装置、光、小道具、ダンスなどの要素も含め、順不同に偶然性をもって演奏していく (チャンス・オペレーションまたは偶然性の音楽) というもの。

台本は、24のシナリオで構成され、舞台は、64分割されている。
偶然、必然的に、どこかで何かが起こっているため、見る位置によって、別のオペラになるよう仕組まれる。


ということなのだが。。。


オリジナル初演では、全ての舞台装置は吊り物で行われたという。
まぁ、劇場の狭い舞台であればそうなることも理解できる。


しかし、今回はここJahrhunderthalle。
巨大インダストリーホールの中から、一番名が細いホールを会場にした。舞台だけでも奥行き60m以上あるのだ。




オリジナルを遥かに超えるバージョンを、乞うご期待!


また今年も、ルールトリエンナーレの季節がやって来た。


舞台と照明の技術者だけで始まったインダストリーホール Jahrhunderthalle Bochumの会場も、まもなく始まる John Cage:Europeras1 の稽古に合わせて、騒がしくなってきている。



jhh



去年までの "最高&最新の技術を投じた ほかではあり得ない大規模な洗練された舞台芸術" から方向大転換し、"新旧交えた機材を用いた 古典的な舞台効果の追及" が、新芸術監督のHeiner Goebbelsこの作品。


Cageのこのオペラは、通常のオペラとは違って 話の筋があるわけでもない。

彼は、まったく新しい舞台芸術を再構築するという意図により、従来のオペラの各要素を解体することから始めた。
譜には各パートのタイミングのみが記され、何が演奏されるかの指示なし。

ということは、古典作品と違って、ほかの演出と比べてみることもできない。


断片的な聞いたことのあるアリアだったり、古き良きヨーロッパの景色だったり、東方願望だったりで、それを見る人の体験や見る角度のよって、作品の印象はガラッと変わってくるはず。

(John Cage ジョン・ケージについて)



舞台の仕込みだけを取ってみても、変わった試みがあちこちに散らばっていて、どんなシーンになるのだろうかとワクワクさせてくれる。



さて。
現在、一番うえの写真でお分りの通り、空のホールに劇場の様々なシステムを取り込み中。


handkonterzug
電動ではない アナログです


 こちら、我らがベルリンの劇場の改修時にお役御免になった、伝統的な綱元 (ドロップなどを昇降させる設備)
ここでまた活躍してくれることは、同郷の身として (!?) とても嬉しい!!


照明機材にも、クラシカルな雰囲気満々なものが、、、



fluter
この色にキュンと来る人は多いのです


70年代の雰囲気漂う、フラットライト。

今は舞台物と言ったら黒が主流だけれど、この時代の器具はこのようなラメブルーが多いのだ。



niedervolt
見た目 インテリアにしたいほどキュートな照明器具


そして、懐かしいパーマ機のようなスタンドは、低圧ランプスポット。
色もオフホワイトでかわいいし、照明器具じゃないみたいでしょ?

足元には、しっかりトランスが付いています!


どんな作品になるのか、楽しみですー


Ruhrtriennale 2011が先日終了したばかりなのに、
もうRT2012Bauprobe バウプローベ が始まっている。


Bauprobeとは、

"Bau 組み立て" "Probe 稽古" なわけで、
「本番の空間に仮(といっても、実物大)の舞台美術や衣装を持ち込み、技術的、構想的に可能かどうかを見る稽古」のこと。


インテンダントが Heiner Goebbels ハイナー・ゲッベルス に変わって早々、チームの雰囲気も意気込みも上昇志向。
彼の豊富なアイデアは、他のアーチストの色と混ざり合い、話を聞いただけでこれがどう舞台で変化していくのか、非常に楽しみな試行である。



楽しみと言えば、、、


大量にある小道具の中で、ひときわ目立つもの。


bauprobe01



迫力があり過ぎの、"剥製"


大鹿の、この ”変なポーズ” はなんなんでしょう?

豪邸のテーブルやチェスト上に飾る用、なのかな??
いや、舞台用か???


習慣でついつい鹿の角を触ってみてしまったけれど、これ、若い雄鹿だね。
うちにある角はもっと沢山枝分かれしているもの。


これを使って、どんなシーンが出来るのか?
(いや、小道具はこれだけじゃないし!)


というわけで、

帰ってきたばかりなのに、
また少しの間 Bochumにいる warabiたちなのであった。。。






Ruhrtriennale 2011が、

我らの(!)"Tristan und Isolde"  - Regie:Willy Decker の初演とともに開幕した。



長ーい3ヶ月の仕込み&稽古が実を結んだといっていいだろう。

何度も仕込んでは撤去して、また別のアイディアを試す繰り返しを乗り越えた末、
初日の日、みんなで「やっと、やっと、ここまで来たね」と喜びを分かち合う。

3度目の正直という言葉があるけれど、演出のDeckerにとってはよい批評が出るかどうか、任期最後のチャンス。
我々 "技術"チームにとっても、自分たちの努力をして築きあげた作品がどうでるのか?、気になるところであった。



批評は下記の通り -ドイツ語だけど、写真付き -

Osnerbruecker Zeitung

Der neue Merker

Deutschlandfunk



結果は大勝利
(ここまでいろいろあったので ちょっとうれし涙のwarabi)



R. Wagnerのドラマチックな音楽に合わせて、Wolfgang Gussmannの自由自在に漂流する氷河のような白い舞台が、廃墟のようなホールの中を彷徨う。

その空間は、25m×15mという舞台が35m幅、深さ50m、高さ9m〜20mというもの。
そこを舞台が滑らかに行き来、そして前につんのめるし(舞台前が低くなって、奥が高くなるという意)、さらに左側にもひっくり返るという、聞いただけでは理解の範囲を超えてしまうくらい大仕掛け。
そして、天反の可動範囲も、上下するだけでなく舞台にあわせて回ってしまうからすごいのだ。
(きっと また図説をしないと理解されないだろうね)


舞台は夢のようでなきゃ、と思う方には、

耳だけでなく目でも、どっぷりとその世界にハマれる約5時間。


音楽性ついては、将来を約束されている天才指揮者Kirill Petrenko が、この名作を大胆な解釈でオーケストラをまとめている。例えば彼は、どの楽器も、どの歌声もバランスよく聴かせるように演出しているのだという。

そして、、、

彼は5時間という長丁場を、どの瞬間を見ても、まるで踊っているように指揮をする。
「そんじょそこら(!)のダンサーは彼を見習わなければいけない!」とwarabiは断言できるほど、彼の指揮姿は見ているものを引き込む力を持っている。

丁寧で、滑らかで、大胆で、繊細で、時には息が上がったような声を出しながら、またモニターからはみ出しながら、体全身で彼の世界を表現しようと必死なのが伝わってくる。


演出のWilly Deckerは改宗仏教徒であり、RTのインテンダントとして就任したこの3年は、世界は3大宗教に関わる作品を演出。

1年目 Moses und Aron (ユダヤ教 キリスト教)
2年目 Leila uund Madschnun(イスラム教)
3年目 Tristan und Isolde(仏教?)


えっ、
あの "トリスタンとイゾルデ" が 仏教?

もちろん、題名を見ても分かるように話自体は全く仏教とは関係のない次元(というか、ばりばりヨーロッパのお話)
しかし、この作品はワーグナーの全作品中で唯一「神」の名(あのキリスト教の!)が出てこない作品。

Schopenhauer ショーペンハウアーによって、仏教精神とインド哲学は、ドイツ哲学界に多大な影響を与えたとされるが、Wagnerも影響された一人であり、仏教に関心を持っていたといわれているのだ。


世界=本来 個人である

仏教=中心は神ではなく人間
   個人の精神を研ぎすまして悟りを開く



この背景は調べて行くとなかなか興味深く、話が随分と脱線してしまったので、ここではこのくらいに。


"Tristan..." には機能的和音の崩壊、いわゆる「トリスタン和音」といわれるものが多く使われていて、楽中に不協和な響きそのものをとくに強調しようと意図されているという。

これをみても、Petrenkoが試みた大胆であるという挑み(全ての音を強調する)は、大変に意味のあることだったと改めて思う。

ともかく、Deckerはこの3作でWagnerのように”世界”を表現したかったに違いない。



またしても、
とりとめのない日記になってしまった。
ご覧になれるかたは是非!チャンスは5回!!




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