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Robert Wilson&Helmut Lachenmann " Das Mädchen mit den Schwefelhölzern" 
ロバート・ウィルソン演出 ヘルムート・ラッヘンマン作曲「マッチ売りの少女」



本日千秋楽。
メディア各紙からたくさんのポジティブな批評をいただき、音楽的にも高い評価をいただいたこの作品。現代オペラという分野で、あまり演奏されない(聞くチャンスの少ない)ということもあり、オペラファンは満足しているようだ。

4ヶ月もの間、この作品のためだけに過ごしてきたwarabiたち。
仕事をいただいたときは、Bobと仕事ができる嬉しさから始まったのだけれど、始まってみれば長期にわたっての膨大な仕事量、そして本番では 繊細なフォロー操作をするという重圧。 
初日が終わって、体が楽になったときに初めて、ストレスを抱えていたんだなーと気づいたり。

日本では「ピンスポット」と呼ばれたりする ”フォロー”とは、英語のFollow spotのことで、ドイツ語ではVerfolger フェアフォルガー という専門用語である。


繊細なフォローとはどんなものなのか。

ぐらぐら揺れないことや、シーンによってディマーをかける(調光する)ことはもちろん、 小道具のピストルだけ、手にぶら下げた角氷だけ、落ちた瞬間のカツラだけ、なんていう極端なフォローの要求が多々あり。


ご興味のある方、稽古風景写真はこちらです。
舞台写真 The little match girl 


厳しい演出家との体験は、とても良い思い出となった。


このwarabiが、RTという国際的フェスティバルで、”ボブと新作を作り、ハイナーに祝福される” なんて、誰が想像しただろうか。しかも、たった一度だけ、warabiのフォローにブラボーを名指しでくれた。これも、生涯忘れられない出来事のひとつになろう。


最終公演後より、一週間の撤去作業で 幕を閉じます。




 


Ruhrtriennale 2013 の最大プロジェクトは、 Robert Wilson 演出の マッチ売りの少女。
現在その稽古中で、眠る時間を確保するのが精一杯な毎日を送っている。

そんな訳で、こちらのブログはなかなか更新できずにいるこのごろ。
稽古風景などは残念ながら写真でお見せできないのだけれど、彼の現場での ちょっとだけ心和む話題をご披露したい。



indira

 

こちらの美人さんは、劇場犬 インディーラちゃん。

同じ現場で毎日顔を会わす、人気者の同僚といってもいい。 小道具さんのワンちゃんなのだけれど、劇場犬として修行を積んでいて、長い間じーっと待つこと可能な高い技術を身につけている。

こうした劇場犬に限らず、職場犬として出勤しているワンちゃんがドイツには結構いる。
日本では「ペットを職場に連れて行くなんて論外」と言われそうだけれど、ドイツではペットだけでなくて子供にも積極的に親の働く場所を見せたり、職場のみんなに紹介したりしている。(それが迷惑になる場合を除いて)これって案外大事なこと何じゃないかなぁ。

子供に親の働く姿や環境を見せるということは、子供と親の住む世界を縮める役割をするだろうし、子供は親の話を聞くという行為だけでそれを想像するのではなく、実際に目で見て大人の世界に興味を得ることもあるだろう。
まだ職場においては、同僚の子供が 職場のカツカツな雰囲気を和らげ、人間の本来の営みを思い出させてくれるというわけだ。

犬にとっても 職場に行くためにトレーニングをされれば、人間の環境に慣れ 幸せに過ごせるしね。



前置きが長くなってしまったが、
お披露目したかったのは、ちょっとホンワカするこちらのエピソード。


みんながピリピリしている ”マッチ売り”の稽古初日。
スタッフ全員が緊張でいっぱいだった。ボブ(ウィルソンのあだ名)が犬の存在に気づいて「犬がいる。うるさい」といったらどうしようという雰囲気だったのに、インディーラが吠えたのにも関わらず、誰も何もいわずに稽古が無事終了。
その翌日も何回か吠えていたけれど、誰も何もいわずに終了。そのうち、ボブは稽古場に到着するとインディーラをナデナデしていくようになったのだ。

もともと犬好きだったのかもしれないボブだけれど、舞台では誰にでも厳しい要求をするボブが、犬には甘いという一面を見せたことで、なんだか現場一帯の緊張が溶けていった瞬間だった。


立派な”劇場犬” と言ったって生きているんだし、稽古中もたまにワンワンと吠えちゃうインディーラだけれど、そんな訳で、みんな協力して気にしてあげたり、そばにいてあげたり、ボール投げにつきあったりしてあげている。彼女は、自分がすごい円滑油になっていることをわかっているのだろうか(...わかってないよね)。


そんなこんなで、
日本でも ”大人社会は大人だけのもの” と線を引かないで、もっとオープンにしていけば未来が明るくなるのではないかな、と思う気持ちを一層大きくした warabiなのであった。



 


FB内発注の動物を3つもやり遂げ、今は本業の方の仕事にどっぷりの毎日。

その 最後の動物は、こちら。


katerfertig
 


ものすごーーーーく苦労した、ロンゲのしかも猫くん。
目といい、顔といい、毛並みといい、ものすごく特徴のある容姿である。

本物の猫写真を見ていない方は、このフェルト動物はちとマンガチックと思われるかもしれないが、オリジナルはもっとすごいのだから。これは随分と押さえている方だと思っていただいていい。


さて。お次ぎは現在進行形。


halle



恒例の出稼ぎ中。

またしても、RTの仕込みである。


今年もものすごい顔ぶれがプログラムをにぎわせている。
ハイナーに、ウィルソンに、ルパージュに、カステルッチに、フォーサイスに、リョージイケダに、、、書ききれないわ。。。

 

blume



こちらは、電気で操作できる、夢のお花!?

これが美術館が開けるくらい珍しい創作楽器に囲まれて、川の周りに咲く25本の電動コントロールのお花などなど。


さて、どんな作品になるのか、ワクワクですー♪



 

Heiner Goebbelsが、ノルウェーのイプセン賞を受賞した!


現在共に働いている我らがシェフが、このタイミングでこの大賞を受賞するとは、本当に喜ばしいこと。

受賞の理由に、彼は "ein wahrhafter Erneuerer 真の改革者" だとある。
なるほど、確かにそういえるかもしれない。


この度のEuroperasでの演出:アリアを一斉に歌わせるとか、ほかの作品:上演中に主役が舞台を降りて、タクシーに乗ってどこかへ行ってしまっても、作品は進行し続け、観客はそのまま舞台に魅入ることになるとか。

えっ、いいの? そんなことしても?
てことを、さらっとやってのけているし。

こちらは、インタビューと稽古風景の映像。

音声はないけれど、舞台がどんな様子だったのか、想像するネタになるかも。






ここのところ涼しいなーと思っていたのに、初日近くなって猛暑を思い出したかの様に カンカン照り。
熱された鉄鋼は熱を保ち、開始時刻の20時になっても、もうそれは暑いまま。

すみませーん、お天道様!
ホールの中にいるwarabiたちは温室のトマトみたいに真っ赤になって困っています・・・


ソリストたちはロココ調のドレスのためにコルセットを着用したり、ドレスワイヤーをつけたり、着心地なんか最悪に加えて、この暑さ。大変だよなー。

オケの人たちは、舞台よりも熱された天井に近いところで演奏するので、それも大変そう。


・・・なんて言ってられない!!
warabiたちも全員舞台に登場するために、衣装があるのだ。それも黒のツナギ。長袖、長ズボン、真っ黒、卒倒しそうに暑すぎる・・・



sonne
Foto:Marcus J.Feger


Das Kulturmagazin des Westens
の掲載写真で伺える様に(もちろん、これは稽古の1シーンで本番用ではありません)、太陽が昇って沈むまでを90分でまとめている。

タイムコードがスタートしてすぐ、日の出となるのだが、その ”日の出方" が変わっている。
なにしろ、始まって12秒後に warabi自身が舞台上に出て行くのだから!


このSonne 太陽のシーンは照明デザイナーの Klaus Gruenberg の一番のお気に入りで、「(warabi)は、これで大スターだよ」とか「この登場シーンが一番好きなんだ」とか、よく言っていた。


90分、踊る人は踊って、歌う人は歌って、道具を押したり引いたり、時には全速力で走ったり、物を運んだり。
舞台技術関係27人、舞台アシスタント25人、ソリスト10人、音楽家25人、アーチスト諸々、総勢107人。
上部写真にある様に、100m64フィールドを動き回る体力勝負の90分作品。


具体的にどんな作品なのか、目で確かめたい方は是非会場へ(残り3回公演あり)


speeddating



公演後には、Publikumgesprech アーチストトークならぬ、Speed Datingスピードデーティングが用意されている。


上記の雑誌に、John Cage作品をどんなものにしたいのかを語っていた演出家ハイナー。
しかし、出来上がった作品は演出家ハイナーや特定のアーチストだけが語れるような枠のものではなくなっていたと彼はいう。

そこで、関わった全ての人から話を聞くチャンスが与えられる様にと、
各フィールドに観客たちのためのテーブルとイスを置き、64の関係者たちが6分ごとに(×6回)テーブルを変えて観客の質問に答えたり、自分の立場から作品にまつわる話をするというものとなったのだ。

6分間で自分の経験を知ってもらう」=「スピード・デーティング」からきているネーミング。

warabiたちにとっても直接感想を聞けるチャンスだし、とてもフェアで、観客にとってもなかなかいいアイディアだと思う。


さてさて。

プレミエといえば、Premierenfeier 初日祝いだけれど、初日公演の前にも、いろいろと特別なことがある。

「長い間(今回は特に長くってスタッフも合わせて6週間の稽古)ありがとう」の意味を込めた、アーチストから関係者へのプレゼントが用意されているのだ。


今回は、特に面白かったので、
こちらでいろいろご紹介したいと思う。


toitoitoichoko
ちょっとおしゃれ風


こちらは、
Toi toi toi Chokoladeトイトイトイ・チョコレート

トイトイトイというのは、初日公演の日に ”おめでとう&頑張って" の意味を込めて言う、ドイツの慣習。
どうやって挨拶するのかと言うと、いつもと反対の右側から相手をハグして、耳元で「トイトイトイ」いいながら、または「トゥトゥトゥ」と唾を吐きながら挨拶をするのだ。

なぜ唾を吐くことで、幸先よくなるのかは疑問。ドイツ人は謎だ・・・



そしてこの日は、Heiner Goebbelsのインテンダントとしての初お披露目でもあるし、今年のRTのオープニングでもあった/
これは、そんな意味のこもったチョコレートという訳。




premierekuchen02
白黒はっきり!


こちらは、舞台美術&照明デザイナーKlausからの”64フィールドブラウニー”
Yes No Maybeの決断サイコロ付き。


premierekuchen01
どれだけ大きいか分かるでしょ?


同じアイディアだけれどさらに大きかった、こちらは照明&美術助手からのイチゴクリームマジパンケーキ
どっしりとしたお味。

このふたつは、どのフィールドを誰が食べるのか、という楽しみ付きで盛上がった。

warabiは、24、33、37が欲しかったのだけれど、さすがにそんなに食べきれず、24だけいただいた。
その番号は、6分間100mフォローの最前列の番号だったのよ。こんな感じで、各々思い出のフィールドがある訳なの。



premieremedalien
金メダルは多いほうがいい?


演出部からは、金メダルの授与。

みんな首にかけてもらって、満足そう〜


そして、最後は60の2段ケーキ


60kuchen


なんと、ハイナーの60歳の誕生日だったのだ!!

初日祝いと、誕生日祝い。
ダブルでめでたい!!おめでとうございます


最高の作品をありがとう!!
この作品に参加できたこと、warabiはとても誇りに思います。


あと3回、じっくりと味わいますよ〜



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